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希望の国のエクソダス

村上龍の一作。
 もう10年以上前の作品で、当時読もうと思っていて、ずるずる来たもの。

 結論的には、村上龍的な作品で、大変面白かった。 慧眼というか、彼の時代を見る目は鋭いよ。
 現代は彼の描いた年月よりも先に来てしまっているが、状況は(もちろん悪い部分が)結構的中しているといえる。
 話の展開について、むろん、中学生の集団がキレイすぎて、ピュアで、賢すぎるのが、あまりにも出来すぎているのが不自然だ。 例えばセックスの話がない。 タスクフォースという実力部隊が警察組織にすんなり組み込まれていくのも実際はあり得ない。
 他に、ヘッジファンドのアタック話にしても、そう簡単に事態の収拾がはかれる訳はなく、色々と御都合主義の点があることは否めない。

 それでも、全体として面白かった。
 結論を出さないが、希望を持てそうな世の中になることをほのめかして終わるところに救いがある。
(そういう感じ方をする俺自身が、もう若くないってことなんだろうな)

 それから、取材活動の一環として、当時話題になった多くの本にあたっていることも感じられた(経済ってそういうことだったのか会議、パワーシフト、など)。
 また村上龍は、「危機感」ということをいろいろな作品で必要なものとして挙げているが、彼自身の危機感に関する考えをもっと知りたいな、と思う。